RPAにおけるシナリオとは?作成の基本ステップやポイントを徹底解説!
DX推進や人手不足を目的に多くの企業がRPAを導入しています。しかし、RPAはただ導入しただけでは最大限の効果は得られません。
RPAを有効活用するにはポイントを押さえ、正しいステップでシナリオを作成する必要があります。しかし、ステップやポイントはおろか、シナリオとは何か理解していない方も少なくありません。
そこで、当記事ではRPAにおけるシナリオの概要と作成するための基本ステップ、ポイントについて解説します。
RPAにおけるシナリオとは
ここでは、RPAとRPA運用には欠かせないシナリオについて詳しくみていきます。
RPAとは?
「RPA(Robotic Process Automation)」とは、日本語で「ロボットによる工程自動化」という意味です。
主に、パソコンで行う「バックオフィス業務」や「ホワイトカラー業務」を自動化できるツールです。自動化できる業務としては主に次のようなものが挙げられます。
- 社内システムの入力業務
- 各種書類の作成業務
- システムから出力した内容のメール作成・送信業務
上記はあくまでも一例であり、他にもさまざまな業務の自動化が図れるため、上手く導入・運用すれば業務を効率化して人手不足の解消につなげられます。
また、ロボットは24時間365日稼働し続けられるため、稼働日ベースの生産性が人よりも高いのもメリットです。
シナリオとは?
RPAにおけるシナリオとは、RPA運用に必要な設計書のことであり、RPAに実行してほしい業務の流れを可視化したものです。請求書や見積書の作成など作業の流れを可視化できる定型業務はシナリオ作成しやすいため、自動化や効率化しやすいでしょう。
RPAはシナリオに沿って作業を進めるため、シナリオが曖昧だと正しい手順で作業できません。したがって、シナリオを作成する際は自動化させる作業内容をしっかりと理解しておく必要があります。
RPAシナリオにおける2つの種類
必要なシナリオ要素は同じであるものの、作成の仕方によって次の2種類に分類されます。
- 簡易型
- 開発型
それぞれの種類について詳しくみていきましょう。
1.簡易型
簡易型とは、プログラミングの知識がなくても作成できるタイプのRPAシナリオです。パソコン操作をRPA機能で記録することでシナリオ作成できます。
社内に専任のシナリオ作成者やプログラミングスキルを持つ人材がおらず、現場の担当者がシナリオ作成する場合は、この簡易型がおすすめです。解説動画を視聴したり、簡単なレクチャーを受けたりすれば基本操作を習得できるため、RPA初心者でも問題なく使用できるでしょう。
ツールによってはeラーニングや研修を備えており、実際にシナリオを作成しながら学ぶことも可能です。
2.開発型
開発型とは、作成時にプログラミング知識が必要なタイプのRPAシナリオです。基本的に「デフォルト操作にある機能の組み合わせ」や「ドラッグアンドドロップ」によってシナリオを作成します。
しかし、必要な機能がデフォルト操作にない場合、プログラミングによって組み込まなければなりません。また、複雑な業務のシナリオを作成する際は、開発スピードや精度の観点から公開されているAPIを使用した方がよいといわれています。
そのため、プログラミングスキルやソフトウェア開発経験者が社内にいないという場合は導入の難易度が高いといわざるえません。
RPAシナリオを作成する際の基本ステップ
RPAシナリオはしっかりと手順を踏んで作成しないといけません。ここでは、RPAシナリオを作成する際の基本ステップについてみていきましょう。
ステップ1.自動化する業務の手順を可視化する
まず、はじめに自動化する業務手順を可視化しましょう。
可視化することでRPAで自動化する範囲や手順を絞りやすくなります。可視化の手順は主に以下のとおりです。
- 業務全体のフローを整理し使用しているソフトやツール、作業内容、ファイルなどを明確化する
- 人が操作するポイントごとに作業をリスト化
- 業務に必要なデータや処理に必要な判断基準を明確化
また、可視化する際は「ファイルフォーマットの例外」や「使用ソフトやツールが動作しない」といったイレギュラーも想定しておくとよいでしょう。想定しておくことで漏れのないシナリオを作成できます。
ステップ2.改めて作業方法を見直す
業務手順の可視化にあわせて、作業方法を見直しましょう。業務手順を可視化すればフラットな視点で作業内容を見直せるため、作業方法を最適化しやすいです。
最適化できれば業務効率をさらに高めることができ、顧客満足度の向上にもつなげられるでしょう。現状の作業内容をそのまま自動化していたという方は、この機会に作業方法を見直してみることをおすすめします。
ステップ3.シナリオの方針を決める
可視化と作業の見直しが完了したら、自動化する業務のシナリオ方針を決めます。
シナリオ方針を決める際、まずは「人が担当する業務と自動化する業務範囲」や「エラーが発生した時の対応方針」などを整理したうえで、RPAに実装する範囲を検討しなければなりません。実装する範囲の検討は非常に重要なポイントとなるため、入念に精査しましょう。
ステップ4.方針内容に沿って実装する
シナリオの方針内容に沿って、実装していきます。ただし、実装の際は人とロボットでは同じ作業するにしても違いがある点を認識しておかなければなりません。
例えば、請求書を作成するとします。件名や請求先、振込口座、明細、振込期日などの入力と説明をすれば人は一連の作業だと判断が可能です。
しかし、ロボットは一連の作業とは判断できないため、指定された作業しか実行しません。「どの欄にどの情報を入力するのか」や「入力したらどのボタンをクリックするのか」など、部分的なところまで細かく指示する必要があります。
ステップ5.実装後に動作をテストをする
実装後に動作テストを行います。動作テストは一般的に次の4ステップで行われます。
- 単体テスト:細かい処理の動作テスト
- 結合テスト:シナリオ全体で正しく動作するか確認するテスト
- 本番データテスト:実データを投入本番さながらに行うテスト
- 耐久テスト:処理するデータ量を増やして長時間動作しても問題ないか確認するテスト
「本番データテスト」では、結合テストで確認できなかったイレギュラーな処理がないか最終確認しましょう。また、「耐久テスト」では、実際の業務よりも2~3倍程度のデータを使用してテストするのが一般的です。
RPAシナリオの作成で押えるべき4つのポイント
RPAシナリオの作成で押さえておくべきポイントとして次の4つが挙げられます。
- 目的を明確にしておく
- 現場の担当者が主体となる
- 複数名で可視化を進める
- スモールスタートを心掛ける
それぞれ詳しくみていきましょう。
1.目的を明確にしておく
業務効率化やヒューマンエラーの削減など、RPAの導入目的を明確にして開発者や現場担当者と共有することが大切です。目的が明確ではないと「シナリオの修正工程が増える」や「目的を達成できないシナリオを作成してしまった」といった事態になりかねません。
これらの事態を回避するためにも、目的を明確にしてからRPAシナリオを作成しましょう。
2.現場の担当者が主体となる
RPAシナリオの作成は開発者ではなく、現場の担当者が主体となって進めなければなりません。RPAに任せようとする業務内容を把握しているのは現場であり、注意点や例外などの詳細な部分を熟知しているのは開発者ではなく現場の担当者だからです。
そのため、目的の実現が可能なシナリオを作成するには、現場の担当者と開発者の連携が不可欠といえます。
3.複数名で可視化を進める
前述の通り、RPAシナリオを作成する際は業務フローの可視化が欠かせません。ただし、可視化する場合は複数名で行うことも大切です。
業務内容を熟知している現場の担当者が主体となってシナリオ作成していても、正しく落とし込めていなかったり、記載漏れをしたりしている場合があります。そこで、複数名で可視化すればさまざまな意見を取り入れながら進められるため、漏れなく可視化できるでしょう。
4.スモールスタートを心掛ける
RPAを導入する際はスモールスタートを心掛けましょう。RPAシナリオを作成する場合「A条件だとB処理」「B条件だとC処理」「エラー時の回避処理設定」といった複数の条件で分岐することになります。
そのため、RPAシナリオ作成に慣れていない方だと、工程の多い業務をシナリオ化するのは簡単ではありません。工程の少ない業務からシナリオ作成をはじめてみるなど、まずはシナリオ作成に慣れることが大切です。
RPAを運用する際の注意点
RPAを運用する際の注意点として次の2つが挙げられます。
- 最初は効果を得られない可能性もある
- 属人化すると対応が難しくなる
それぞれ詳しくみていきましょう。
最初は効果を得られない可能性もある
RPAを導入・運用するには初期投資や人件費はもちろん、導入後も通用費や業務プロセスの変更など、コストや労力がかかります。高い初期投資をする分、RPAの効果を期待している方も多いでしょう。
ただし、RPAを導入したからといって最初から効果を得られるとは限りません。複雑な設計書になる程、当初の予算をオーバーしたり、開発の難易度も上がったりするため、運用までに時間がかかるからです。
また、業務プロセスの変更に従業員が追いつけず、逆に業務効率が落ちることも考えられます。最初から効果を期待するのではなく、スモールスタートからはじめて、徐々に成果を上げていく方が、長期的にみてRPAの成功につながりやすいです。
属人化すると対応が難しくなる
属人化させないこともRPA運用には欠かせません。RPAを代替するということは、これまで人の手で行われていた業務手順や処理方法をRPAに任せるということです。
しかし、RPAに頼りきってしまうと、いざRPAに不具合が起きて人が対応しなければならなくなった時に「業務手順がわからない」や「エラーの処理方法がわからない」という事態になりかねません。
このように、属人化してしまうと人への切り替えができなくなるのです。RPAに任せている業務も定期的に確認し、属人化を防ぐための工夫が必要です。
まとめ
RPAシナリオを作成する際に重要なのは「目的の明確化」です。ただ、目的を明確にするためには、現場がどのようなRPAを求めているのか、どの業務を自動化すれば負担が軽減するのかしっかりとヒアリングしなければなりません。
また、RPAシナリオには「簡易型」と「開発型」があり、プログラミングスキルやソフトウェア開発経験がない場合、「開発型」でシナリオを作成するのは難しいでしょう。したがって、業務負担を軽減できるシナリオを確実に作成するためには、スキルや目的などを踏まえて、自社と相性の良いRPAツールを導入することが大切です。